福祉業界では「人が足りない」「採用が難しい」といった声が絶えません。
しかし、採用以前に深刻なのが“離職”です。新人・若手が数年で辞めてしまうことで、法人は採用コスト以上の損失を抱えています。
本記事では、「1人の離職が経営に与える経済的影響」を解剖し、経営者が知るべき定着率改善の視点をまとめます。
離職の“見えにくい”コスト
一人の職員が辞めると、次のようなコストが発生します。
- 採用コスト:求人広告、人材紹介料、説明会など
- 育成コスト:OJT・研修に投じた人件費
- 生産性低下:欠員による残業増、現場力の低下
- サービス品質の低下:利用者満足度やご家族の信頼低下
ある調査では、1人の早期離職が約800万円の損失につながるとされています。
これは単なる人件費ではなく、法人の信用・ブランド価値をも含むトータルコストです。
“定着率”を高めることは最大の投資
経営者が注目すべきは「採用数」ではなく「定着率」です。
例えば、年間10名採用して3年以内に半数が離職すれば、延べ数千万円の損失になります。
逆に、離職を抑えれば 「採用費削減 × 現場安定 × サービス向上」 の好循環が生まれます。
つまり、定着率を改善することは、最も費用対効果の高い経営投資なのです。
定着率改善の3つの打ち手
では、具体的に経営者はどんな施策を打つべきでしょうか。
現場で効果が出やすいのは以下の3点です。
1. 評価制度の透明化
- 「どんな行動が評価されるのか」を明文化
- 給与表だけでなく、キャリアパスを示す
2. 働きやすさの整備
- シフト調整の柔軟化
- ICT活用による事務負担軽減
- メンタルケアの仕組み
3. 管理職の育成
- 離職理由の多くは“上司との関係”
- 現場リーダーが育つかどうかが定着率を左右
経営者への問いかけ
- 自法人の離職率を正確に把握していますか?
- 1人の離職コストを試算したことがありますか?
- 定着率向上のために、どれだけ投資していますか?
経営は数字で語るもの。
「人が辞めてもまた採用すればいい」という発想は、法人の財務を圧迫し、将来の競争力を失うことにつながります。
おわりに
離職は“見えない赤字”です。
1人あたり数百万円の損失を生むことを意識すれば、定着率改善が経営課題の最優先であることは明白です。
採用戦略だけではなく、評価・育成・マネジメントを一体的に整えることが、福祉法人の持続的成長につながります。
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