なぜ「学び直し」が必要か
福祉法人の経営者や管理職は、日々の運営・人材管理・制度対応に追われています。
しかし、これからの福祉業界を担うリーダーには、「従来の経験」や「感覚」だけでは通用しない時代が来ています。
報酬改定や制度改正のスピードは加速し、現場職員の価値観も多様化し、地域社会に求められる役割も変わっています。
そのときに問われるのは、「自分自身が学び続けられるか」。
ここでは、福祉法人の経営者・管理職がこれから重点的に学ぶべき7つの領域を整理しました。
1. ITリテラシー
- デジタルツール(勤怠管理、クラウド会計、AI議事録など)の活用
- DX推進(マニュアルのクラウド化、データ分析による離職防止)
- AI活用(文書生成、研修コンテンツの効率化)
ITが苦手だと現場任せになり、法人全体の変革が進まない。最低限のリテラシーは経営者自身が身につける必要があります。
2. ビジネスリテラシー
- 財務・会計(キャッシュフロー、収支構造の理解)
- 人件費と生産性のバランス
- 事業ポートフォリオの最適化
福祉は公益性が強い事業ですが、経営を持続可能にしなければ職員も利用者も守れません。
3. マネジメントスキル
- 人材定着のための1on1やフィードバック
- 公正な評価制度の運用
- 対話型リーダーシップ(トップダウンから伴走型へ)
「見守るだけ」ではなく「育てる」「活かす」マネジメントへ。
4. キャリア理論の理解
- 若手がなぜ辞めるのか?──キャリア発達理論で説明できる
- 中堅層が「伸び悩む」理由──キャリアアンカーで見える
- 職員の成長を支える仕組み作り
職員のキャリア観を理解しないと、すぐ「最近の若い人は…」という世代論に逃げてしまいがちです。専門家になる必要はありませんが、職員のキャリアについて、ある程度は理論的な裏付けも理解しておくほうが良いでしょう。
5. 制度トレンドへの対応
- 厚労省、子ども家庭庁による制度改正
- 報酬改定、処遇改善加算、虐待防止体制の強化
- 事故や不祥事に対する行政の動き
- 「後追い」で対応するのではなく、「制度の方向性を先読みして組織を変える」姿勢が求められます。
6. ケアの学問的理解
- パーソンセンタードケア
- 発達障害・インクルーシブ教育
- エビデンスに基づく支援(福祉実践と研究の橋渡し)
「経験でなんとなく」から「科学的に裏付けられた支援」へ。
利用者・家族にとっても信頼できる法人になる基盤です。
7. 地域共生・コミュニティづくり
- 施設の枠を超えた「地域の福祉拠点」としての役割
- 学校、医療、企業、住民と連携したネットワーク構築
- ボランティアや市民活動との協働
地域に開かれた法人であることが、採用・定着・信頼に直結します。
まとめ:学び続けるリーダーが組織を変える
リスキリングやアンラーンという言葉は流行していますが、本当に求められるのは「地位を守るための学び」ではなく「未来を切り開くための学び」です。
経営者や管理職自身が学びのトップランナーであることが、法人の文化をつくります。
経営者の学びは、職員の学びの鏡です。
職員の成長は、経営者の学び直しから始まります。
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