── “作っただけ”で終わらせない、福祉法人のDX入門
■ はじめに:「マニュアルがあるのに使われない」という現象
「せっかく作ったのに、誰も見ていない」
「内容が古くなっても、誰も気づかない」
「現場では“結局あの人に聞いた方が早い”と言われる」
福祉法人の現場でよく聞く、マニュアルに関するこのような声。
その多くは、「作っただけで使われない」マニュアル問題に直結しています。
しかしこれは、現場職員の意識や態度の問題ではなく、マニュアルそのものの構造的な問題に原因があるケースがほとんどです。
■ 原因1:マニュアルの“つくり手”と“使い手”が分離している
多くのマニュアルは、
・法人本部
・経験豊富な管理職
・外部のコンサルタント
によって作成されます。
ところが、実際にそのマニュアルを“見る”のは、新人や現場スタッフ。
つまり、「書き手」と「読み手」がまったく違う立場であるにも関わらず、その差を埋める工夫がなされていないのです。
■ 原因2:文書構造が“読み手の行動”を想定していない
よくあるマニュアルの課題:
- テキストが長い(業務全体の説明が1ファイルに)
- 見出しが不明瞭(どこに何が書かれているか分かりづらい)
- 行動ではなく概念中心(理念・ルールが先に並ぶ)
→ “今どうすればいいのか”という行動手順が直感的に探せないのです。
これは、現場で時間のない職員にとっては「使えない」=「見られない」マニュアルとなってしまいます。
■ 原因3:「正解を伝える」マニュアルが、“現場の知恵”を殺している
よくある失敗例は、
「この通りやれば間違いない」とばかりに、正解を押しつけるマニュアルです。
たとえば、
- 入浴介助の手順
- クレーム対応時のフロー
- 非常時対応のチェックリスト
など、定型的な業務こそ、現場の知恵や応用力が活きる領域です。
しかし、マニュアルが“この通りやれ”という命令形で作られてしまうと、実際には対応できない場面でフリーズしてしまう職員も出てきます。
■ 解決へのヒント:「マニュアルは“検索される現場知”に」
これからのマニュアルは「使われる」だけでなく、**“検索される現場知”**であるべきです。
- 短く、簡潔に、行動中心で
- 検索性の高い構造(FAQやタグなど)
- 定期的に更新し、みんなで育てていく仕組み
- 写真・動画・事例を組み合わせて、実践知に
これはDXというより、現場と経営の「知」の共創に近いイメージです。
■ Live aliveでは、マニュアルの見直し・デジタル活用支援も行っています
私たちLive aliveでは、
- 現場職員との共創によるマニュアル刷新
- NotionやGoogleサイトなどのツール選定
- DX導入時の「巻き込み設計」
- “使えるマニュアル”への再設計
といった支援を行っています。
福祉法人の“現場に根づくDX”を一緒に進めていきましょう。
次回予告
次回は「現場の知恵をマニュアルに組み込む方法」についてご紹介します。
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