現場まかせ経営が限界を迎えている
福祉法人の経営相談に乗っていると、「各施設のことは施設長に任せています」「現場が一番分かっているから」という言葉をよく耳にします。
もちろん、現場主義は福祉の基本です。しかし、複数施設を運営するようになると、現場任せ経営は必ずどこかで行き詰まります。
人件費の配分(評価の不均衡)、採用の不均衡、情報共有の非効率──。
法人全体を俯瞰する仕組みがないまま施設が増えていくと、「強い現場」と「孤立した現場」が生まれ、結果として法人の一体感が失われていきます。施設長の法人内における発言力の強さの違いも法人内のアロケーション(予算分配?理事長の注目の分配?)に影響していきます。
本部機能とは「管理」ではなく「支援」である
福祉法人における本部機能は、一般企業でいう“コーポレート部門”とは性質が異なります。
単に統制を強めるためではなく、「現場を助ける・育てる」ための支援機能として設計することが重要です。
本部の役割は大きく次の3つに整理できます。
- 共通基盤の整備
給与制度・評価制度・マニュアルなどを法人共通の基準として整える。 - 情報の一元化と意思決定支援
各施設のデータ(稼働率・人員・人件費など)を本部で集約し、経営判断を支える。 - 人材育成と採用の統合管理
採用広報・面接・研修などを法人レベルで企画し、各施設を支援する。
つまり本部とは、“コントロールセンター”ではなく、“サポートセンター”なのです。
経営者が現場に縛られて動けない現実
多くの経営者が施設の「管理者」として常勤登録されています。
人件費の園計上の都合上、経営者を法人本部に置けない構造的な制約があるためです。
結果として、経営者が日々の現場業務に追われ、法人経営の中長期戦略を考える時間を失っているケースが非常に多い。
「経営の舵を取るべき人が現場のシフトを埋めている」──そんな法人は珍しくありません。
ここにこそ、“外部人材”を積極的に活用する意義があります。
本部機能の立ち上げ期は、内部人材だけで完結させることが難しい。
むしろ外部の専門家が入ることで、内部のしがらみを越えて構造改革を進めることができます。
Live aliveでは、こうした本部機能の代行・共創を通じて、法人が自走できる仕組みを一緒につくっていきます。
仕組みが人を活かす
本部を整えるということは、「経営を仕組みに乗せる」ことです。
仕組みが整えば、経営者は現場の“火消し”から解放され、現場職員は安心して自分の仕事に集中できます。
本部があることで、
- 誰が、どの判断を、どこまでしてよいかが明確になる
- 問題が起きても属人的に抱え込まなくて済む
- 経営者が未来志向の意思決定に集中できる
本部は“権力”ではなく“循環のハブ”です。
組織を支える静かな力として、法人の安定と成長を裏側から支えていくもの。
次回は、その本部構築を阻む「名ばかり管理者登録の罠」と、経営者が動けなくなる構造について掘り下げます。
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