【児発・放デイ編】子どもの成長に繋がる「本質的な支援」を評価する制度とは

「保護者対応はとても上手で、評判も良い。でも、そのスタッフの支援が本当に子どものためになっているかというと、少し疑問を感じる…」

児童発達支援や放課後等デイサービスの現場で、そんな違和感を覚えたことはありませんか?

私たちは、つい「保護者からの評価」という分かりやすい指標に頼りがちです。しかし、障害児支援の核は、あくまで一人ひとりの子どもの成長・発達を支えること

この記事では、「保護者からの評価」というバイアスから脱却し、スタッフが「子どもの支援」という本質に集中できる環境を作るための、新しい評価制度の考え方を提案します。

私たちが陥りがちな「保護者からの評価」の罠

「保護者対応が上手いスタッフ=良いスタッフ」と、短絡的に評価してしまうことには、大きな危険が潜んでいます。

もちろん、保護者との連携は不可欠です。しかし、評価の軸が「いかに保護者を満足させるか」に偏りすぎると、スタッフの意識は子どもから保護者へと徐々に移っていきます。その結果、「子どもの成長にとって本当に必要な支援」よりも、「保護者が喜びそうな、目に見えやすい成果」を優先してしまうということが起こりかねません。

それが、現場で時折見られる「保護者対応への熱量が高すぎる」スタッフが生まれるメカニズムの一つなのです。

評価の中心は『支援の専門性』。その先にこそ、本当の保護者支援がある

では、どうすれば良いのでしょうか。私たちは、評価の順番を正しく捉え直す必要があります。

STEP1:まず「子どもの支援」の専門性を磨くことが最優先。 すべては、目の前の子どもを深く理解することから始まります。その子の特性、好きなこと、強み、行動の背景にあるもの。この観察とアセスメントの専門性こそが、全ての土台です。

STEP2:次に、その支援の意図や成果を「言語化」する能力を高める。 なぜその声かけをしたのか。なぜこの環境設定にしたのか。専門性とは、感覚や経験だけでなく、自らの支援を論理的に説明できる「言語化能力」とセットになって初めて磨かれます。

STEP3:その結果として、初めて質の高い「保護者支援(連携)」が可能になる。 言語化された専門性があって初めて、保護者に対して「お子様のこの行動には、こういう背景が考えられ、私たちはこういう意図で支援しています」という、根拠のある説明ができます。これこそが、小手先のテクニックではない、本物の信頼に繋がる保護者支援です。

この順番を間違え、STEP1と2が疎かなままSTEP3ばかりを追い求めると、中身のない、上辺だけの対応になってしまうのです。

「本質的な支援」を可視化する、評価の3本柱

これを、具体的な評価制度に落とし込んでいきましょう。

第1の柱:『観察とアセスメントの深化』を評価する

子どもの行動の背景にあるものを、どれだけ深く洞察しようとしているかを評価します。「落ち着きがない」といった表面的な事象でなく、「なぜそうなるのか」という仮説を立て、その子に合った関わりを試行錯誤するプロセスそのものを評価の対象とします。

第2の柱:『支援の言語化』を評価する

「なぜ、その支援(声かけ、環境設定)を行ったのか?」を、自身の言葉で説明できるかを評価します。日々の記録やスタッフ間のカンファレンスで、支援の意図を論理的に伝え、チームの知見を高めることに貢献できているか。ここが専門性を飛躍的に高める上で、極めて重要なポイントです。

第3の柱:『専門性に基づいた連携』を評価する

保護者対応を「報告・説明」ではなく、**「専門家としての見立てを伝え、家庭と連携するための対話」**と再定義します。第2の柱である「言語化された支援」を元に、保護者や関係機関と建設的な対話ができているかを評価します。決して保護者の言いなりになるのではなく、専門家として対等なパートナーシップを築こうとする姿勢を重視します。

評価制度を運用する上での、3つの約束

  1. 「保護者からの人気投票」にしない 保護者アンケートはあくまで参考情報です。感謝の声はスタッフの励みとして共有しつつも、評価の主軸には置かないことを明確にしたほうが良いだろうと考えています。
  2. 「失敗を許容する」文化を作る 良い支援は試行錯誤から生まれます。子どものために行った誠実なチャレンジの結果、うまくいかなかったとしても、そのプロセス自体を称賛し、次の学びに繋げる文化を育みましょう。
  3. 評価は「フィードバック」とセットで行う 評価は、スタッフのランク付けをすることが目的ではありません。本人の成長に繋げるための対話の機会です。評価を伝える面談の時間を十分に確保し、次への具体的なアクションプランを一緒に考える場にしましょう。

まとめ

目先の「保護者ウケ」ではなく、スタッフ一人ひとりが「子どもの支援」という本質に向き合い、専門性を高めること。それこそが、数年後に地域で最も信頼される事業所になるための、唯一の道です。

この記事が、貴方の事業所の評価制度が「保護者」と「子ども」、どちらを向いて作られているかを、見直すきっかけとなれば幸いです。もちろん、この問いに唯一の正解はありません。まずは保護者に向き合う、という考え方を否定するものでもありません。しかし、私たちが”子どもを真ん中に”という言葉を使う時、その真ん中が言葉だけの空洞にならないよう、この記事で提案したような制度作りが大切だと考えています。

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