─ 専門職のキャリアアンカーと管理職志向のズレ
1. 昇進を打診されても「現場にいたい」と断られる理由
福祉の現場で昇進の声をかけても、 「私はずっと現場にいたいので」「人をまとめるのは向いてないんです」 という言葉で断られることは珍しくありません。「ぜひ、管理職やらせてください!」という回答の方が珍しいのではないでしょうか?
その背景には、福祉専門職が育んできた“キャリア観”と 管理職に求められる能力・志向との根本的なズレがあります。
2. シャインのキャリアアンカー理論で読み解く
心理学者エドガー・シャインの理論によれば、 人はキャリア選択の際に具体的には、職業や職種、勤務先などを選ぶ際の「判断基準、譲れない軸(キャリアアンカー)」を持つとされています。別の言い方をすれば、その人が自分らしく生きるために、絶対に譲りたくない大切なこと=アンカー(船の錨)になります。
福祉専門職に多いのは、以下のようなキャリアアンカーです:
- 技術・専門性志向:専門分野で高いスキルを磨き、現場で価値を発揮したい
- 奉仕・社会貢献志向:人の役に立ち、社会に意義ある仕事をしたい
このようなアンカーを持つ人にとって、 管理職になることで「現場を離れる」ことは、 自分のやりがいや専門性の発揮から遠ざかるように感じられるのです。
3. 「現場の延長としての管理職像」が描けていない
福祉職員にとって、管理職は“違う種類の仕事”に見えてしまいがちです。
- デスクワーク中心
- 会議や調整ばかり
- 利用者・子どもとの接点がない(減る)
結果として、
「あんな風にはなりたくない」 「あの人みたいに厳しく言えないから無理」
という声が上がるのです。
つまり、現場の延長線上に“育成する役割”があるという感覚が育っていないのです。
4. 管理職に必要なのは「新しい動機づけの再設計」
Live aliveでは、管理職へのステップを「等級」や「処遇のアップ」ではなく、 以下のような“動機の再設計”としてサポートしています:
- 現場での経験を、後輩の育成やチームづくりに活かせる
- 支援技術だけでなく、「人を支える力」も専門性の一部である
- “一人の支援”から、“チーム全体の支援”へと視点を広げていく
こうした視点を持てるようになると、 管理職は“やりたいこと”を手放すポジションではなく、 “やりたい支援を広げていくポジション”へと意味づけが変わります。
5. まとめ|専門性の延長線上にある“育成の専門職”へ
キャリアアンカーが専門性や社会貢献にあるからこそ、 管理職になることが「その価値を広げる役割」だと実感できるような支援が必要です。
Live aliveは、役職を押しつけるのではなく、 「あなたの価値を、次の世代にどう届けていくか?」という問いを起点に、 一人ひとりのキャリア選択を支援しています。
次回(第3回)は、「問いかけによって“管理職的ふるまい”を育てていく」プロセスについて紹介します。
前回のブログ”福祉職員が管理職になりたがらない理由①”はこちら
コメント