「日々の運営に追われて、学びの時間なんてない」
福祉業界ではそんな声をよく耳にします。確かに現場は忙しく、目の前の利用者支援が最優先です。しかし、学びが止まる組織はやがて硬直化し、職員の成長もサービスの質も停滞してしまいます。
人材が学び続ける組織こそが、変化の時代に生き残るための条件です。
学びが止まる組織の特徴
- OJT任せで体系的な研修がない
- 外部研修は単発で終わり、継続性がない
- 「忙しい」を理由に学びを後回しにする
- 学んでも現場に持ち帰る場がなく、個人の知識で終わってしまう
これでは学びが「点」で終わり、「線」にも「面」にもなりません。
なぜ学び続けることが重要か
経験学習モデル(コルブ)
経験→内省→概念化→実践というサイクルが回ることで、人は成長します。学びを放置すれば、この循環が止まり、経験が「ただの繰り返し」に。
ダブルループ学習(アージリス)
行動の修正だけでなく、前提や価値観そのものを問い直すことが組織の進化につながります。一人の気づきを組織の問いに変えることが大切です。
越境学習
同じ組織の中だけでは学びが閉じてしまいます。他法人や異分野との交流が、新しい発想や改善のきっかけを運んできます。
福祉組織でできる実践ステップ
Step1:学びを共有化する
外部研修や勉強会に参加したら、5分でもいいのでチームで共有。チャットや掲示板でも構いません。「学んだことはみんなのもの」にする仕組みが重要です。このとき、新たにパワーポイントで報告書をつくってもらって・・・という手間をかけさせないことがポイントです。新しい資料などは作成させず、準備に工数をかけないことが継続のポイントです。
Step2:学びを現場で試す余地を残す
新しい方法を小さく試せる空気をつくる。結果がうまくいかなくても「試したこと」自体を評価することで挑戦が続きます。
Step3:外部とつながる
福祉現場はどうしても施設内の世界に閉じこもりがちです。地域の法人同士でのオンライン勉強会や、研修会への参加。他の現場を知ることで、自分たちの常識を疑う視点が得られます。
Step4:学びを評価に組み込む
人事評価制度に「挑戦」「改善提案」を項目として入れる。学びが評価に結びつけば、組織全体で取り組む姿勢が生まれます。ただし、研修に出席しただけというような評価項目は入れない方が良いと考えています。学びを活かした行動変容に繋げるために、研修出席の先にある挑戦を尊ぶ文化を創っていく必要があります。
まとめ
学びを「一部の人の特別な取り組み」にせず、「組織文化」として根づかせること。
それが福祉業界における組織開発の第一歩です。
日常の忙しさの中でも、学びを循環させる仕組みを持つことで、職員の成長が利用者へのサービス改善につながり、離職防止にも直結します。
「学び続ける組織」は、未来に強い組織です。
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